驚いた話

スーパーシニアのご活躍は、私にとって身近なものだ。
場の研究所所長・清水博先生は、この11月で87歳。居場所と〈いのち〉の問題について、精力的に発信し続けておられる。
5月にお目にかかった微生物の専門家・平井孝志先生は89歳の父と「同年兵」。
10月にお目にかかった中国問題の大家・伊原吉之助先生も同じく卒寿。
明晰さには憧れるばかりだが、なぜこれほどまでにアクティブなのか。

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呪いと祈り

昨日は上野の東京国立博物館で「マジカル・アジア――博物館でアジアの旅」を見てきた。昨秋、「木々との対話──再生をめぐる5つの風景」東京都美術館のガイドツアーがよかったので、今回は「呪いのパワーを探す旅」というツアーに参加したら、ネーミングのせいか大盛況で、ゆっくり見て回るのはツアー終了後になった。
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温故知新の石油化学技術――国立科学博物館産業技術史講座にて

ずっと昔、酸素窒素の業界で取材をしていた。見慣れない技術用語に圧倒されながら、せっせと過去の記事を読み、那野比古さんの半導体の本を持ち歩き、図書館でレーザについて調べた。工業ガスの技術用途は、鉄鋼、化学、半導体、食品、医療など幅広い。炭酸ガスやアセチレンと書いたところで、溶接のことも金属のこともまったくわからない。「ナフサ」という言葉は技術者との会話によく登場したが、それが何なのかも知らずにいた。
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「幸せ」を意味するウェルフェア―1

知り合いのアメリカ人に「子どもの心」の英訳を尋ねたことがあった。てっきり“Heart”という言葉を使うと思っていたら、返ってきた答えが”Children’s Welfare “を含む長いフレーズで、驚いたことがある。数人の大学の先生が話し合ってそれがいいということになったそうだ。
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峠の時代の〈いのち〉と富の話(2) 清水博氏講演・「親鸞仏教センターのつどい」にて

生も死も〈いのち〉のドラマに力を貸す
生き物から居場所へ〈いのち〉を与贈すると、居場所のシステムが、自己組織的に生成します。ここに〈いのち〉のつながりが生まれ、居場所の〈いのち〉が今度は生き物へとプレゼントされます。これは、自己組織が進んでいくことによって、「縁」の世界が拡大しているためです。このしくみによって、〈いのち〉のドラマの生成が進行していくのです。
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峠の時代の〈いのち〉と富の話(1) 清水博氏講演・「親鸞仏教センターのつどい」にて

場の研究所所長である清水博先生の『近代文明からの転回』(晃洋書房)の冒頭に、真壁仁の「峠」という詩が引用されている。東北大震災という未曽有の災害を経ても、相も変わらず個人の富を守ることに汲々とする現代人に、「今、私たちは峠の時代にいるのではないか」と、穏やかに語りかける先生が、4月14日、学士会館で開かれた「親鸞仏教センターのつどい」で、「自己組織する〈いのち〉――人間の死生観を超えて」という題で話をされた。
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あるとないとでおおちがい

洗濯機やトイレのボタンの脇などによく点字がついている。小さな点がいくつか浮き出て、その組み合わせが文字になっている。それに指で触れる必要のない人には模様のようにも見えるが、その小さな突起はれっきとした文字である。文字があるといろいろな情報を共有することができ、生活する上での大きな助けになることはいうまでもない。
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お宅訪問――同行援助事始め

新米のガイドヘルパーとして、視覚障害のある人の同行援助を行うことになった。

視覚障害の友人を長く知っていたことで、自分にもできそうに思っていたが、その人が並はずれて自立度が高かったために一緒に歩けただけのことだった。逆に、障害がありながら独力でいろんなことをこなすだけの能力と努力についてあらためて気づき、自分は大した配慮もしていなかったことがよくわかり、愕然とした。
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見えない人と見える人

東京都文京区に「文京ガイドヘルプサービス」という視覚障害者のガイドを派遣する事業所があり、水曜日の月例会でガイドに向けて寸劇が演じられた。

登場するのは、とある会合に参加する視覚障害者(利用者)とガイド3組で、それぞれA組、B組、C組とする。A組の利用者は、レモンイエローの服を着た女性で、控えめで配慮の行き届いたガイドと一緒にいるという設定。B組の元気なガイドが、利用者Aさんを見つけて、自分の付き添ってきた利用者をほったらかして、名前を名乗りながら駆け寄って挨拶をした。さらに、C組からも顔見知りのガイドが、「だ~れだ?」などと言いながら、Aさんに近寄ってくる。

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