『摂食障害――見る読むクリニック』の出版トークイベント2―質問に答えて

出版トークイベントの後半は、フロアからの質問に著者が答える形で、摂食障害への理解をより深める時間となった。

質問者1:拒食症で体重が低下しています。縛ってでも(栄養を投与して)体重を増やすべきですか。
鈴木:成長期であれば経管栄養もしますが、20歳過ぎた人ではむずかしいでしょう。ことと次第によりますが、意識がなくなって管を抜くとあぶないので、抑制が必要な場合もないとはいえません。 続きを読む

「ADDICTION(アディクション)~今日一日を生きる君~」を観て

7月27日、どうしても観たい芝居があって、夕方、代々木上原のIto・M・Studioへと出かけた。駅から坂を上って行くこのスタジオは、演劇研究所を主宰していた故伊藤正次さんの教え子たちが今も表現活動を行う場所だ。前からこの人のことは知っていたが、シュタイナー展で偶然その名を目にして調べたら、内谷正文(うちやまさぶみ)さんのひとり芝居の情報がヒットした。薬物依存症について、個人的体験にもとづいてつくられた劇である。 続きを読む

スピリチュアルケアと物語――柳田邦夫氏と傾聴

最近、医療や看護の本に「スピリチュアルケア」という言葉を見かけることが増えた。治す医療とケアの看護が補い合うのは当然として、人間を単に部分の集合ととらえていては済まない状況が増えているためだろうか。たとえば、がんの末期を宣告された人、耐えがたい喪失体験、大切な人の重い病気や障害に苦しむ人には、処方する薬がない。宗教的なものや医療以外の救いを求めるのは、ごく自然なことである。
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死は誰のものか――映画「眠れる美女」を観て思うこと(3)

ある看護書に、「ケアが侵襲(ストレス)にならないようにかかわる」という記述があった。
善意で行う医療処置も、いいことばかりではない。抗がん剤などの強力な作用をもつ薬は、ある症状に対処するために薬Aを投じると、
その副作用を防ぐために今度はBを投じ、さらにその行き過ぎを正すためにCを、といった具合に、
薬が薬を呼ぶようなところがある。治療が患者を激しく消耗させるひとつの例である。
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死は誰のものか――映画「眠れる美女」を観て思うこと(2)

もし、あなたが、突然倒れて呼吸が止まったなら、ただちに心肺蘇生の救急処置がほどこされる。
気道がふさがらないような姿勢にして人工呼吸を行い、次に心臓マッサージ、AED(自動式体外除細動装置)によるショック療法が基本だ。
さらに状態を見て、栄養成分を補う点滴や人口呼吸器による呼吸補助が加わる。 続きを読む

死は誰のものか――映画「眠れる美女」を観て思うこと(1)

2013年秋に日本で公開されたイタリア映画の「眠れる美女」(マルコ・ベロッキオ監督)を、先月観る機会があった。仕事で終末期医療についての文章を読んでいた矢先のことである。この作品は、2009年に実在したイタリアの尊厳死事件を扱っている。 続きを読む

認知症予防学会(2)――シンポジウム・生活習慣病と認知症

9月29日の午前は、予防が最も力を発揮する生活習慣への介入について、新潟大学・池内健氏、京都府立医科大学・栗山長門氏、大阪大学・里直行氏の3人による講演が行われた。認知症発症の原因としては、遺伝など先天的なもの、加齢、生活習慣の3つがある。はじめの2つはどうすることもできないが、唯一意志によって変えることができるのが生活習慣(life style)である。 続きを読む

認知症予防学会(1)――市民公開講座 認知症予防のできるまちづくりをめざして

◆認知症の「予防」とは何か
2013年9月27日から3日間新潟の朱鷺メッセで開催された第3回日本認知症予防学会。最終日の午後開かれた市民公開講座では、日本医科大学武蔵小杉病院の北村伸氏、鳥取大学の浦上克也氏が登壇し、認知症の最新の情報と地域での活動について講演を行った。
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