驚いた話

スーパーシニアのご活躍は、私にとって身近なものだ。
場の研究所所長・清水博先生は、この11月で87歳。居場所と〈いのち〉の問題について、精力的に発信し続けておられる。
5月にお目にかかった微生物の専門家・平井孝志先生は89歳の父と「同年兵」。
10月にお目にかかった中国問題の大家・伊原吉之助先生も同じく卒寿。
明晰さには憧れるばかりだが、なぜこれほどまでにアクティブなのか。


答えは、先日、生ビールの乾杯で伊原先生が口にしたひとことに尽きる。

「できるだけ長く生きて、この国の行く末を」
いま滅亡に向かいつつある祖国への愛、地球への愛が、冴えわたるエネルギーの火を消さないのだ。

父にアテンドして、伊原先生と南木倶楽部主催者・南木隆氏(こちらはまだシニアとも思われない)にお会いした時の会話には、驚き、圧倒された。

南木氏の話。
ある外交の場で、日本人某氏が、「あなた方の国では、みなギボンの『ローマ史』を読んでいるのでしょう?」と言うと、某国大統領の答えて曰く、「この席についている者でギボンの『ローマ史』を読んでいない者はいない」。
つまり、そうした教養を前提に政策を練り、議論を戦わせるのが彼らの日常ということだ。

某氏は、「ポエニ戦争は第二次までにしてくださいよ」とジョークを飛ばした由。
理解するには、おさらいすることが多すぎる、貴重な話である。

テレビをつければ、歌って踊れるかっこいい男の子たち(といっても20代後半)が、大学を出て、漢字の読み書きができない姿をさらしている。SNSのせいで、日本語が不自由な大人が急増している。無知なる自分ですら、母国語を憂う気持ちになる。

伊原先生、今度はロシアの政治家ベリヤ*の自伝からの挿話。
子どもの頃、公園でよく出会った乞食がいたという。ある時、何気なく硬貨を恵んでやると、乞食は受け取って、すさまじい形相でベリヤを睨みつけた。

「施しなどという侮蔑をよくも自分に与えてくれたな」という恨みである。似たような話に、中国人の子どもが日本人に養育され、成長した暁に、恩ある人を殺害したという事件があったらしい。

日本人は単純でお人好しだから、誰かに親切にすれば感謝が返ってくるものとばかり思っている。ところが、そんな心情など1ミリも通じることのない人種がいる。これは、異文化のひとつの形として知っておくべきだ。

そのほか、スパイとは「世の中で最も優れた人物」であり、別名を「特務」と言うこと、江戸時代の藩校がどんな種類の人物を育てたか、日本の組織での課長の絶大なる実権の是非、アメリカにへし折られた日本の背骨、などなど、おぼれそうになるほどさまざまな話題がランチのテーブルに押し寄せ、楽しかった。

いつか、スパイになるには、のような本を買って放り出していたが、読めば今からでも何かの役に立つであろうか。

*ラヴレンチー・ベリヤはロシアの政治家。スターリンに仕えた。

場の研究所 https://www.banokenkyujo.org/

微生物的環境技術研究所 http://bikanken.com/

伊原吉之助教授の読書室 日亜協会 http://jas21.com/athenaeum/athenaeum.htm

南木倶楽部・宗教と哲学の部屋 http://minakiclub.jugem.jp/?eid=1