分類学と生物学者

北海道にお住まいの馬渡駿介先生(北海道大学名誉教授)から、12月21日付けの朝日新聞北海道版に掲載された記事を送っていただいた。

タイトルは馬渡先生が南方熊楠賞受賞式で話されたのと同じ「ヒトの目にとまらない生き物たち」。「分類学」とは何か、ということから説き起こしてある。

一般人にとって、難しいイメージしかないが、ノーベル賞研究や新幹線の技術を支えるものであることがよくわかる。

20191221朝日新聞29面道内「北の文化」001

生物学者の視点を一般人が知る機会はあまりない。先日の南方熊楠賞の記念パーティーでの先生方の会話は、普段耳にしない種類のもので、とても興味深かった。多様性という言葉、世間で言われているのとは大きくちがう。

その「多様性」は、その日の参加者にとっては、ごく当たり前の言葉なのに、通常それに関心をもつ人はたぶん少数派である。

生き物を扱う人にとっての多様性とは、当然、生物多様性のことである。

生物多様性とは「生態系」と「種」、「遺伝子」の3つのレベルでさまざまな種類があることで、その多様性は、ヒトや地球が持続可能であるための基盤として、非常に大切なのである。

国際的には、1992年にリオデジャネイロで開かれた地球サミットでの話し合いをもとに、1993年に生物多様性条約が発効し、日本も条約を締結している。管轄は環境省と想像がつくが、生物多様性基本法が平成20年(2008年)に成立・施行されていることは知らなかった。

自分が知っている範囲でわかるのは、以前よくお参りしていた根津神社の亀である。たくさんいるので面白いかと思って友人を連れて行ったら、あれはアカミミガメという外来種で、繁殖力が強くもともと棲んでいた日本古来の亀の領域を侵食するらしかった。つまり、生態系によくない影響を与えているということだ

馬渡先生によると、「繁殖力の強い倭人という外来人種がもともと住んでいた日本古来のアイヌ人種の領域を侵食したのも事実」とのことで、これはまた別の大きな問題につながっている。

大企業に勤める人は、「多様性」を女性の活用と定年後の再雇用、せいぜい外国人の採用ぐらいと捉えているように見える。障害者については、通常かかわる機会が少ないので、話題にしているのを見たことがない。「ダイバーシティ」などと横文字を使っても、その範囲は限られていて、ちっとも感心しない。

和歌山で、友人が言った「『多様性』の多様性が必要だね」という言葉でオチがついた。

※生物多様性(環境省) http://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/index.html