音符の話

音緒のサイトのトップ画面を、「五線譜の上で踊っているしずくとか露」、
と、若き凄腕のデザイナー、美保さんにお願いしてから、あまり説明もしないのに、
すぐにイメージ通りのものが仕上がってきた。
なんでそんなのにしたかったのか、考えてみるに、
子どもの頃大好きだった童話のせいだと気がついた。

書き出しはよく覚えてる。朝、カメラのシャッターのように、パチリと音を立てて目を覚ます子どもがいる、という一文があって、本当に音が出るか何度もやってみたものだ。
主人公の男の子が、野原の草のしずくのポロンくんと友達になって、水仙の中に頭を突っ込んだら、
どこか別の世界に行けるというお話だった。
何がそんなに好きだったのだろう。音楽がふんだんに溢れていて、何度読んでも豊かな気持ちになれたせいか。

ずっと思い出せなかったタイトルが、たまたまわかって、目黒の図書館まで行って借りてきた。
とうに絶版で、保存庫から出してもらい、大事に持って帰った。

「うたうポロンくん」

藤田 圭雄、小峰書店

帰りの電車でドキドキしながら読むと、音楽どころか、色も風も匂いも、いろんなものが詰まっていて、リアルとファンタジーを自由に行き来しながら、いくつかの小さな事件(子どもにとっては大事件)が起きる。
ポロンくんは、しずくでもあり音符でもある。このイメージが何十年も残っていたらしい。

もうひとつ、坂村真民さんの「露」という詩を、ノートに書き写して繰り返し眺めていた影響もあったかもれしない。

露が
教えてくれたもの
まるいものがいい
すきとおったものがいい
かすかなものがいい
じぶんをもとうとしないものがいい

小さい、すきとおったもの、気をつけていないとすぐに消えてしまうくらいはかないものに、たとえようもない美しさを感じ、憧れ続けている。

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