しつもんに答えてわかること

月初め、久しぶりにしつもんの会に出た。主催者は新刊『デキる人が使っている 人の心を動かす 使える質問』(朝日新聞出版)の日小田正人氏で、共著者のマツダミヒロさんはゲスト。久しぶりにのんびりしたすがすがしい声を聴いて、穏やかな気持ちになる。日小田さんの話は、いかにも現場の人の声を知りつくしたという感じで、大人の物言いを教えられた。

「魔法のしつもん」を知ったのは、独立直後の右も左もわからない頃だ。印象に残っている話は、「シャンパンタワーの法則」。積み上げられたグラスは、下から満たすことはできず、一番上のグラスからシャンパンを注がなければならない。それは、一番上のグラスである自分自身を満たすことである。ふと気持ちが楽になり、そのあと、急な仕事が一本入り、この会の印象もよいものになった。

しつもんの会では、いつも参加者どうしがしつもんをし合い、考えを共有するワークがある。「正しく問えば答えは自ずから明らか」とは、昔からよく言われてきたことだが、やってみるとそれほど簡単ではない。中に、ペアを組んで、世間話の練習のように、あらかじめ書かれた項目に沿って、一方が相手に順に自分のことを話させるものがあった。

お生まれは? お仕事は? 何が成功? これからどうなりたい? などと話すうちに、ここ数年口に出して言ったことのない言葉が出てきた。
「私は、人に話を聞いて、それを文章にしたい」。
好きなこと、希望することでも、現実にそれができるかどうかはわからない。かといって、思うことは自由である。そんなことも忘れていて、自分で自分がこんなことを考えていたのだと、少し驚いた。

しつもんは、自分自身との対話でもある。日頃は、この対話がなかなかできず、それなりに、セッティングを必要とする。しつもんの会がいつもリラックスできる「場」であるのには、主催者の「場」に対する考え方が反映されている。

昨今、若者から会社員まで、「場づくり」という言葉は流行りで、勉強会や読書会などもさかんに行われている。そのような「場」の多くはイベントの一種かOccasionで、ゆるやかな仲間づくりとしては、Facebookの「一度会ったらお友達」のレベルも多い。もう少し共有する時間が長い「場」は、Opportunityともなる。仕事の必要で会うだけの間柄が、ある会話から思いがけず深い付き合いになり、十年も二十年も続く大切な友人となったり、繰り返し時間を共有して互いの性格を少しずつ知り、関係を深めていくこともある。

「場」がもう少し深くなると、それはContextとなり、職場や家庭などのように、同じ文化を共有して、助け合って生きるといった意味合いをもってくる。これが、清水博先生の説く「場」だと思う。『星の王子様』のキツネの言葉のように、時間をかけて互いを「飼いならし」、互いがほかの誰とも交換できない存在になっていく。このような「場」を居場所としてもち、その居場所が自分にとって安心できるものであれば、人は安定した精神状態で前向きにいられる。誰かと意味のある内容を共有し、助け合って、同じ「居場所」を豊かにすること。それを自分が望んでいて、それを表明してもよいことにようやく気づいた。

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