ボディワーク考(2)――システマ1

3月30日(日)、渋谷にてはじめてロシア武術・システマの入門講座を習う。
講師は北川貴英先生。武道の練習ではなく、ビジネスマンや就活目前の学生を対象とした、リラックス法が主体。お目にかかるのは、おととしの取材以来だ。フェルデンクライスの先生との対談は、抜群に面白かった。

書くのも上手い方だが、話も上手い。淡々と明晰で何より親しみやすい雰囲気が魅力である。雨の中、大遅刻で少し話を聞きそびれたことが悔やまれる。いろんな話と動きを習ったが、結局、自分のからだがどういう時にどう動くか、わかっている人のほうが少ないのではないかという印象を受けた。

それで思い出したのは、「野口体操 からだに貞(き)く」「野口体操 おもさに貞く」を書いた野口三千三さんである。演劇をやっている人ならば誰でも知っている「寝にょろ」や「ぶら下がり」などの体操の考案者であったと思う。「寝にょろ」は、床にあおむけに寝て、全身をさざ波のように波打たせる動きだ。からだは、皮膚で覆われた袋で、体内の水に骨が浮かんでいるというイメージをはじめて知った驚きは忘れない。骨は、からだを支える堅固な建造物のようなものだと思っていたのだ。

テレビに出演された野口さんの言葉も厳しくて面白い。「私はからだが硬いので」と言う人に向かって、「あなたは傲慢だ」と言ったのである。自分の勝手な思いこみで、からだの可能性を限定することを戒めたと同時に、「あなたはそれほど自分のからだを知らないではないか」と投げかけた言葉でもある。実際、からだという無意識の領域を、私たちは、ふだんほとんど顧みることもなく、あって当然、動いて当然、という程度のおおざっぱな理解しかしていない。からだが硬いといったアナウンサーは、たしかその時、本人が驚くような動きをしたはずだ。

システマの講座で面白かったのは、「人は動きを認識できない。認識できるのは姿勢だけ」という指摘だ。だから、インプットが重要になる。正しい姿勢や動きをまずからだに覚えこませる。この日は、胸骨を前後に動かす練習で、何人もの人が先生に背中を押されて自分の胸骨が前進するのを感じ、胸を押されて、ぐっとうしろに引っ込むのを知った。

リラックスすることと、実際にからだを動かし、感じてみることがいかに大きな可能性を生むか、つくづく感じた時間だった。

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