素敵なNLP速習講座

書店でコーナーがあるほど注目されているNLP。心理学やコーチング、コミュニケーションに関心のある人なら、その正式名称が神経言語プログラミング(neuro-linguistic programming)だと知っているだろうか。

NLPはアメリカで開発されたコミュニケーション技術で、人間の無意識を意識化させることによって、思考や行動パターンを変更し、パフォーマンスの向上やコミュニケーションの円滑化をもたらす。開発者は、カリフォルニア大学のジョン・グリンダ―とリチャード・バンドラ―で、すぐれたパフォーマンスを生み出すことで知られる著名な心理療法家3名のコミュニケーションを徹底的に分析・研究し、体系化した。もともとは、1970年代初頭、ベトナム戦争の帰還兵の心の治療に素早い効果を上げたことから、一般に普及するようになった。

人間は、外界を視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚(体感)といった五感を通じて認知し、個々に内部処理したのち、行動という形でアウトプットしている。つまりインプットが脳(N)でなされ、内部処理として言語化(L)し、プログラミング(P)とよばれる行動につながる。たとえば、快晴の日を心地よく体感すれば、口には出さなくても「気持ちのいい日だな」と心で言葉にし、行動が積極的になる、といった具合に、三者は密接に関連している。

NLPの重要なキーワードに、「意識」と「無意識」がある。口癖、考え方、行動や生活習慣のかなりの部分が無意識の産物であり、得てして望まない「いまいちな日常」につながっているが、その無意識または潜在意識を、いったん意識の俎上に上らせ、新しい枠組みに再構成することが、成果やコミュニケーションにプラスの変化を生むという。

そもそも、現在無意識に行っている行動――それは寝る前の歯磨きや、自転車を漕ぐことでもいいが――も、はじめは意識して習い覚えたことである。新しく学んだことがいつしか無意識にできるようになることは、行動を機能的にし、疲れを減ずるメリットもあるが、悪しき生活習慣から脱却したい時など、無意識を点検することが必要になる。その作業として、五感や言葉を意識できるようトレーニングすることが大切になるのだ。

問題のパーツを一度取り出して、無意識と感情のコントロールにより修繕し、もう一度無意識下におさめると、格段に動きがよくなり、気分も上向き、いろんなことがいい方向に回りだすということか。いまいちな日常が劇的に変わって、女性など内面からきれいになる人もいるというのも、あながち嘘ではなさそうだ。

五感のうち、人によって得意分野が異なり、ビジュアルイメージに強い視覚派を「V(visual)」、聴覚にすぐれた人を「A(auditory)」、体感を重視する人を「K(kinesthetic)」などと呼んで分類するが、これは単に人それぞれに優位な感覚が異なるというだけの話である。が、このちがいが時に笑えない状況を生み、「相手をしっかりみつめて雄弁に語る」Vの上司のお小言を、Aの部下が「眼を閉じてじっくり真摯に受け止める」時、「なぜちゃんと聞かないのか」といったあらぬ誤解を呼ぶこともあるが、これは互いが暮らす世界の違いに気づかず、歩み寄りの努力ができなかったというだけのことである。このような状況を避けるためにも、相手に響きそうなものがVAKのどれであるか、日頃から注意して観察し、知る努力は欠かせない。

『交渉人』という映画を観たことのある人なら覚えているかもしれないが、相手の言葉が嘘か本当か、視線を解析して知ることができる。人の視線は、「昨夜食べたもの」など過去を想起する際は左に動き、未来や未知のもの、事実ではないものをイメージする際、右上に動く。これを活用して、オバマ大統領などプレゼンテーションにすぐれた人は、自分の子ども時代の話をする時、聴衆の視線が左に向くよう壇上での位置を変え、未来の希望を語る時、聴衆の視線を右に誘導する。お笑い芸人もメンタリストもこのようなことは勉強しているという。

潜在意識に、3つの特徴があるという話は、興味深かった。
 1.潜在意識には時制の概念がない → 過去を否定する人は、現在も否定していることになる
2.潜在意識には人称の概念がない → 他者の悪口を言う人は、自己を傷つけ、自尊心も低い
3.潜在意識にはものごとの大小の概念がない → 小さなことにも丁寧に向き合うことが大切
現在の自分が置かれている状況に感謝し、毎日を丁寧に生きることが、思い通りの状況を引き寄せることにつながるようである。

つらかった過去の記憶などもリフレーミングで書き換えて、現在を明るい、正常なものにできるのは、災害や事故を経験した人に有用だろう。組織やカウンセリングの現場で活用されるNLPによって人間関係や生活が楽しいものになれば素晴らしいが、「だからといってNLP信者になる必要はありません」という講師の言葉が、とても公平で好感がもてた。

This entry was posted in 心・からだ, 音緒・ねお・NEO. Bookmark the permalink.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です